日本海洋掘削株式会社 様

日本海洋掘削株式会社様ロゴ

 

 

国内唯一の海洋掘削コントラクターとして国際的に高い評価と実績を得ている日本海洋掘削株式会社(以下、日本海洋掘削)。同社では、海上のリグを衛星通信MVSATでIP-VPN網へと接続し、ERPやIP電話を利用している。導入の経緯と目的、そしてシングテルのソリューションがもたらした効果について詳しく伺った。

日本海洋掘削の事業概要

海上リグ

― 日本海洋掘削の事業概要を教えてください。

日本海洋掘削は、石油・天然ガスの探鉱・開発にかかわる海洋掘削事業をベースに、海洋掘削技術や石油開発に関するエンジニアリングサービス事業や、石油掘削技術を陸上工事に応用した水平孔掘削事業を展開しています。

― 海洋掘削事業について、もう少し詳しく教えてください。

海洋掘削は、洋上から、海底下数千メートルにある石油・天然ガスの貯蔵層まで確実に掘進する、高度な技術力と工事管理能力が要求される事業です。当社は、国内唯一の海洋掘削コントラクターとして、国内外の多数の石油・天然ガス開発会社から依頼を受け、アジア、オセアニア、北米、中東、アフリカ、地中海など、幅広い海域を舞台に海洋掘削工事を実施しています。

衛星通信MVSAT、IP-VPN、WAN高速化サービスを利用

― 利用しているシングテルの通信サービスを教えてください。

衛星通信MVSATとIP-VPN、WAN高速化サービスの3つのサービスを利用しています。

  1.  MVSATは、「HAKURYU-5」「HAKURYU-10」「SAGADRIL-1」「SAGADRIL-2」「NAGA1」という5基の海上リグ(掘削装置)をネットワークへと接続するために利用しています。
  2.  IP-VPNは、本社と海上リグ、シンガポールにあるデータセンターを結ぶために利用しています。
  3.  WAN高速化サービスは、国際WAN回線を利用すると業務アプリケーションのパフォーマンスが落ちるケースがあるので、それを改善するために利用しています。

そのほか、シングテルにはWAN環境全体の運用や構築もサポートしてもらっています。

日本海洋掘削のネットワーク構成イメージ

MVSATで海上リグを接続している目的

飯田氏― MVSATに関して伺います。MVSATを利用して、海上リグをネットワークに接続している目的を教えてください。

おかげさまで2009年12月に東京証券取引所第一部へ株式を上場したのですが、上場の準備のためにWebベースの業務アプリケーション(ERP)を全社に導入したことが、MVSATを導入するきっかけとなりました。

― なぜ上場すると、海上リグでもネットワークを接続して、業務アプリケーションを利用しなければならないのでしょうか。

もちろん上場だけが目的ということではありません。以前は、衛星通信でやり取りができない大容量のデータや優先順位の低いデータは、MOなどの外部メディアを介して月に数回程度やり取りしていました。
しかし、そのようなデータのやり取りでは、迅速な経営判断や月次決算の処理などができません。
また上場の準備以外にも、OHSAS18001、ISM Code、ISO9001、ISO14001を統合した「HSQE Management System (Health:健康, Safety:安全, Quality:品質 and Environment:環境保全)」という統合型マネージメントシステムを実現するためにも、当社のリグとリアルタイムで情報のやり取りができる環境が必須でした。
そのため、リグと本社間でさまざまな情報をリアルタイムにやり取りのできる仕組みが必要だと判断し、常時接続で通信ができるMVSATを導入することとなりました。

MVSATを導入する以前の通信環境

― MVSATを導入する前は、海上リグとどのように通信していたのでしょうか。

MVSATの導入前は、インマルサットという通信衛星サービスで、主に電話やFAXなどを利用していました。一部、インターネットの通信にも利用していたのですが、通信速度が遅く従量制だったので、容量の小さなメールやデータのやり取りなどを行う程度で、常時接続で利用することはできませんでした。
ときどき、リグ上でインターネットを利用できるよう、石油会社や外部の協力会社がインターネット通信用のアンテナを持ち込むことがあり、そんなときには空いている時間に作業員もインターネットを利用していたこともあったようです。

― アンテナは簡単に持ち込めるようなものなのでしょうか?

半径が何メートルもある大きなパラボラアンテナなので運ぶだけでも相当大変なのですが、リグという施設ではもっと大きな機械や設備を利用していますので、現場の作業員から見るとそんなに大げさなことではないようです。

シングテルのMVSATを選択した理由

古河氏

― シングテルのMVSATを選択した理由を教えてください。

いくつかの通信会社のサービスを検討しましたが、以下の5つの理由からシングテルのMVSATを利用することにしました。

  1. 定額制で常時接続できる
    地上のネットワークサービスは、定額制のサービスが当たり前となりつつありますが、衛星通信はまだ従量制のサービスも多いのが現状です。基本的なことですが、定額制で常時接続できるサービスということでシングテルのMVSATを選択しました。
  2. 国内でサポート受けられる
    導入前はもちろん導入後のサポートに関しても、国内に窓口があり日本語でも対応してもらえる通信会社を選びました。実質的に、国内で本格的にMVSATのサービスを提供している会社は、シングテルだけとも言える状況でした。
  3. リグが滞在する海域をサポートしている
    当社のリグが掘削を行う海域がサポートされているサービスを選択しました。通信会社によっては、一部の海域しかサポートしていないケースもあるようです。
  4. アジアを中心にグローバルに事業を展開していること
    リグからの衛星通信を地上のどこで受信するかも重要なポイントです。米国や欧州で衛星通信を受信すると、そこから日本までのネットワーク環境によって通信の品質が左右される場合もありますので、アジアで衛星通信を受信するシングテルが最適だと考えました。
  5. ネットワークの安定性
    衛星通信なので、地上のネットワーク以上に安定的な通信環境を提供してもらえる通信会社を選びました。シングテルは、規模も大きく、実績も豊富なことから安定した通信環境を提供してもらえると考えました。また、自社の衛星システムでネットワークを運用しているので、安心して利用できると考えました。

リグで利用しているアプリケーション

― 業務アプリケーションのほかにもアプリケーションなどを利用していますか。

業務では、内線用のIP電話やメールなどに利用しています。以前は従量制だったので、時間を気にしながらやり取りをしなければならなかったのですが、常時接続なので時間を気にすることなく利用できるようになりました。
また、作業員が個人的なメールをやり取りしたり、Webサイトを閲覧する場合にも利用できるようにしています。なにせ、ほとんどの作業員が1カ月ほどリグに滞在し、地上とは簡単に連絡が取れなくなりますので、これまでも電話やFAXなどの利用を一部認めてきました。まだ十分とは言えないかもしれませんが、以前と比べるとこのような福利厚生面も充実させることができました。

リグとの通信速度

通信用アンテナ

― リグとの通信速度はどのくらいですか。

通信速度は512kbpsです。インマルサットの時と比べると数倍の帯域になりました。シングテルのMVSATでは2Mbpsまでサポートされているので、もう少し速い回線にしたいという思いもありますが、当社の場合、5カ所のリグを接続しなければならないので、現在はすべてのリグで512kbpsのサービスを利用しています。

― 512kbpsで業務アプリケーションやip電話などを十分に利用できるのでしょうか。

地上のネットワークとまったく同じというわけにはいきません。特に、MVSATを導入した2007年ごろは、十分なパフォーマンスを確保できませんでした。

― それはなぜですか。

いくつかの原因がありますが、1つは回線速度です。業務アプリケーションやOSは、地上のブロードバンドネットワークを前提に設計されていますので、このような細い回線では思ったようなパフォーマンスが出ない機能やアプリケーションもありました。
次に、衛星通信ならではの問題なのですが、地上のネットワークと比べるとどうしても通信の遅延が大きくなってしまいます。そのため、通信速度と同様にアプリケーションやOSが対応できないということもありました。
また、通信回線とは関係のないことなのですが、現場の作業員が新しい業務アプリケーションに慣れていなかったという問題もありました。それまで独自に構築してきたスタンドアロン型のシステムに慣れきっていたので、新しいWebベースのシステムの使い勝手に戸惑いもあり、ストレスとなった部分もあったようです。

ネットワークのパフォーマンスを改善

追川氏

― そのような問題をどう解決されたのでしょうか。

シングテルに相談したところ、WAN高速化サービスとIP-VPNを導入する提案を受けました。
シングテルでは、このような国際WAN回線を通じてアプリケーションを利用するケースで、パフォーマンスを改善した実績が数多くあるということで、実際にデモ環境も用意していただきました。そのため、事前に導入効果を確認した上でWAN高速化サービスとIP-VPNを導入することができました。

― 具体的にどのような提案だったのでしょうか。

まず、WAN高速化装置をリグと本社に設置することで、データをキャッシュしたり、TCPやアプリケーションプロトコルを最適化し、アプリケーションの通信時間を大幅に短縮します。同時に、WAN回線のトラフィックを圧縮することで、帯域を有効活用できるようになりました。
また、リグをIP-VPN網へと接続することで、帯域の割り当ても最適化しています。

― 帯域の割り当てを最適化するとは。

MVSATの導入当初は、公衆インターネットを介して、リグと本社の通信を行っていましたので、ネットワークの帯域をコントロールできませんでした。
IP-VPNを導入することで、VPN上に業務アプリケーション専用の帯域を確保し、他の通信に影響されることなく、安定的に通信できるようにしました。

― どのくらいパフォーマンスが改善されたのですか。

数値などでは計測していませんので体感ですが、アプリケーションの反応が大幅に改善されました。
また、業務アプリケーションの通信とそれ以外の通信が混在することがなくなったので、業務アプリケーションのデータをより安全な環境で通信できるようにもなりました。

今後の拡張の予定

― 今後、拡張の予定などはありますか。

将来的に本社で管理しているサーバをデータセンターへと移行することも考えていますので、その際にはシングテルと相談しながらネットワークの変更作業を進めたいと考えています。

シングテルへの期待

― シングテルへの期待などあればお聞かせください。

国内におけるMVSATの導入例はまだ少ないようですが、シングテルは自社の通信衛星を保有し、アジア太平洋全域における実績も豊富ということで、安心して任せることができました。
IP-VPNに関しても、グローバルなネットワークの導入・運用に長けているので、当社の課題を理解いただき、的確な提案をしていただけたのでとても助かりました。
今後も、WAN環境全体の運用・構築をサポートしていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

*取材日時 2010年2月
*IP-VPN、IPVPN、IP VPNは同義です。