日本海事協会 様

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日本海事協会という名前からは地味な印象を受ける。しかし実際には、世界50カ国120ヶ所に拠点を持つ、ロイズやABSと並ぶ世界最大の船級協会の一つ。知られざるグローバル企業である。その日本海事協会が、今回、なぜ中国地域のIP-VPN網の構築をシングテルに託したのか。情報技術部長の塩月学氏に詳しく聞いた。

シングテルをどう活用しているか

― 現在、日本海事協会では、シングテルのサービスをどのようにお使いいただいているでしょうか。

シングテルからは、中国の各拠点を結ぶIP-VPNサービスの提供を受けています。対象は、大連、青島、上海、広州の4拠点。
現在、天津、寧波の2拠点を追加構築中で、2006年8月を目標に運用開始予定です。

日本海事協会の業態 – 世界有数の国際船級協会

― 日本海事協会の業態についてお聞かせいただけるでしょうか。

船級というのは皆さんにあまり馴染みがない用語ですが、一言でいえば海上における人命と財産の安全確保及び海洋環境の汚染防止のためのシステムです。船級協会は、船舶及び海洋構造物の設計、建造から保守について世界的に通用する基準を作り、それが健全に保たれていることを証明するための検査を実施しています。名前からは、政府機関のように聞こえますが、実際は政府とも海事関連団体からも完全に独立した公正な第三者の立場でサービスを提供している非営利の民間団体です。

「日本」海事協会というと、日本の船舶の検査だけを行っている印象がありますが、実際には世界各国の船の検査を行っています。 現在、日本海事協会に登録されている船舶は約6400隻ですが、そのうち日本の船舶は約15%、残りの船の国籍は63カ国に及んでいます。そのため、当会のサービスを世界中でご利用いただくことができるよう、検査事務所のネットワークを全世界に展開しています。

現在、世界で運行されている商船は約9万隻で、それらの総トン数は6億数千万トンと言われていますが、そのうち総トン数ベースで1億3千万トン、約20%が日本海事協会に登録され船級サービスを受けています。世界各国の政府から検査代行機関として承認されている国際船級協会は、日本海事協会の他に250年の歴史を持つ英国のロイズ、米国のアメリカン・ビューロ・オブ・シッピング、ノルウエーのノルスケ・ベリタスなど全部で11協会ありますが、総トン数ベースでは日本海事協会への船級登録トン数が世界最多となっています。

日本海事協会とは大変、地味な印象を与える名前です。しかし、実際には、国際的に高い地位を占めていること、また日本政府を代行するような重要な責務を担っていることなどが、これまでの説明でご理解いただければ幸いです。

日本海事協会のネットワークの特徴

塩月学氏― 日本海事協会のそのような業態に起因する、「ネットワークの特徴」などあればお聞かせください。

順々に述べれば以下の通りです。

  1. 【グローバル】
    グローバルというのは宣伝文句で言っているのではありません。全世界規模で移動する商船の検査を24時間365日体制で検査するという船級サービスの業態上、世界43カ国、102カ所に専任検査員事務所があり、さらに加えて嘱託検査員の拠点があります。世界中の主要港はもとより、中にはチリのバルパライソや、南アフリカのダーバンなどの、一般の皆様には聞き慣れない場所にも拠点があります。それら全拠点をネットワークでつないでいるので、文字通りグローバル(地球規模)のネットワークといえます。
  2. 【各拠点の規模が小さい】
    世界のあちこちに広く薄く人員が配置されているのが、当協会の拠点の特徴です。例えば、商社などの場合は、ニューヨークや北京など主要都市に50人~500人規模のオフィスを華々しく構えていることでしょう。しかし海事協会の場合は、世界の港に比較的小規模な事務所を構えるのが普通。スタッフが3~4人の拠点も珍しくありません。
  3. 【ネットワークは落ちてはならない。本当に24時間365日動いていなければならない】
    先に述べたとおり、世界中を移動する船を検査しています。また損傷、海難などの事故が発生すれば緊急対応の技術支援、状況確認、原因調査などを行います。 しかし検査サービスは忙しい船の運行スケジュールの合間にタイミングよく行う必要がありますし、事故はいつどこで起きるか分かりません。ということは24時間365日、世界のあらゆる拠点でスタンバイ体制が取れていなければなりません。つまりネットワークは24時間365日稼働していなければならない。かけ声ではなく、本当の話として。

― そうした業態において通信回線に求められる条件は何になるでしょうか。

『確実な安定接続性を持ち』、かつ『安価である』という大変、厳しい条件を求めざるをえません。『安価である』ということを特に述べているのは、現実問題として、チリのバルパライソや南アフリカのダーバンに高価な通信回線を引くことが採算上ペイしないという事情によるものです。

なぜ中国4拠点を、ADSLではなくIP-VPNで結んだか

― 今回、中国4拠点にIP-VPN網を構築したのはどういう経緯から?

最初は、IP-VPNではなくADSLの活用を図っていました。やはりADSLが、世界各国で最も入手しやすい標準的なサービスといえたからです。

しかし中国のADSLは概して不安定でした。国内はまだ良いとしても、国外に出たとたんパフォーマンスが悪化しました。かつてはADSLで最大400K~500Kのスループットが出せた時期もありました。しかし上海でユーザーが急増して以来、IXが一気に混雑したのでしょうか、目詰まりを起こしたかの如くに回線速度が劣化し、いつパケットロスが起きてもおかしくない状態に陥りました。

中国の場合、現地のプロバイダにも安定性が期待できません。また現地のローカルキャリアも、何といいましょうか・・・、当てにすると痛い目を見ます。
中国は、現在、経済の高度成長期にあります。日本海事協会にとっても非常に重要な地域。通信のノンストップ性を特に確保しておきたい地域です。

このような状況をふまえ、中国エリアにおいてはADSLではなくIP-VPNを活用することに決めました。投資に値すると判断したのです。

シングテルを採用した理由

― 今回、シングテルのIP-VPNサービスをお使いいただいています。シングテルのことはどこでご存じいただけたのでしょうか。

Web検索を通じてです。海事協会では、常日頃からスタッフが、世界各国のテレコムサービスについて、情報収集しています。どのようなサービスをどこから購入すれば、43カ国102拠点を、円滑に相互接続できるのか。正しい認識を得るために、情報収集は重要です。

― 最終的にシングテルを選んだ理由は何だったのでしょうか。

当時、我々が通信に対して要求していた水準を満たせるのは、事実上シングテルのみであったこと。それがシンプルな選択理由です。またシングテルが、アジアで一番の回線量を保有していること。そしてシンガポールという国柄からして中国でのオペレーションも円滑に進むことが期待されたこと。これらもプラス要因となりました。

IP-VPNへの切り替えに伴う回線速度の改善

― 現在の回線状況はいかがでしょうか。

期待通りの安定性が確保できています。中国拠点で使っているアプリケーションの仕様を考えた場合、要求速度は、安定して100K以上。最適速度は200K以上ですが、IP-VPNに切り替えて後は、常時350Kのスループットが出せています。ほぼ日本国内と同等の使用感を確保できています。

― 企業としてのシングテルへの評価はいかがでしょうか。

日本法人のレスポンス、顧客対応が良いと思います。今、何をやっていて、どこまで進んでいるのか。できていないこと、これから取り組むことは何なのか、それがよく見える。報告も要を得て簡潔。段取りも明瞭であり、良いと思います。
こうしたインフラサービスの場合、アカウンタビリティ、説明責任の能力が重要になります。通信会社によっては、ひどい場合ですと、トラブルが起きても、放りっぱなし。こちらから連絡して初めて事態に気づくという、お粗末なこともあります。
そういう会社と比べて、シングテルの日本法人は、よくやっていると思いますよ。

今後の展望

― 今後の展望についてお聞かせください。

中国拠点の重要性は今後さらに増していくでしょう。それと同時に、中国において、安定した回線接続を確保することの重要性も増していきます。シングテルには、今後も優れた技術とサービスを安定供給してくださるよう、期待いたします。

*取材日時 2006年6月
*IP-VPN、IPVPN、IP VPNは同義です。