グローバル企業のガバナンス

グローバル企業のガバナンス

「ガバナンス(governance)」とは、「統治」という意味の言葉です。企業による「ガバナンス」というのは、「企業をまとめておさめること」、つまり「どのように企業組織をコントロールしていくか」ということになります。具体的には「企業の不正行為を防ぐための仕組み」や「企業が効率的な業務を行うための仕組み」のことです。どの企業でもガバナンスに関して強化しようと取り組んでいますが、グローバル企業になると海外という異文化社会との関わりが非常に難しくなります。どうすれば上手くガバナンスが出来るのか。有名企業の失敗例と成功例から考えてみましょう。

国内トップのカジュアル衣料品ブランドである株式会社ユニクロは2001年、イギリス・ロンドンに海外初進出を果たしました。ところが、一時は21店舗にまで増えたものの、巨額の赤字を計上し、撤退を余儀無くされます。当時、同社の柳井正会長は、「海外の現地法人は現地人が経営しなければならない」という考えのもと、現地の老舗デパートで勤務経験のある人物を社長に採用しました。ところが、保守的な経営陣や組織になり、ヒエラルキーが生まれます。ユニクロの掲げる企業風土とは程遠いものになったのです。

失敗原因として挙げられるのは、「人材選択・育成」、「企業理念の不浸透」です。たしかに、現地のビジネスに精通した現地人を責任者にすることは正しい戦略の1つです。しかし、現地でビジネス展開するにあたって最も大事なことは「企業理念の浸透」です。前提として企業のヴィジョンを知り、企業の経営理念を理解した人材が、現地の責任者になることが必要となります。そうすることで、自社の理念が責任者から浸透していき、自社の商売を実現することができるのです。もちろん、そうした中で、現地の商習慣に精通した人物がいることも、重要になってきます。

参考資料:ユニクロ・キリン・丸紅・ソニー…日本企業の海外進出の「失敗例」から学ぶ!

こうした一方で、東アジアやASEAN諸国に着々と勢力を広げるコンビニエンス業界の大手・ファミリーマートは海外進出に成功していると言えるでしょう。ファミリーマートの海外事業本部で活躍する小林桂氏は、かつて講演で「日本流の変えてはいけない領域、ローカライズが必要な領域を明確にするために、共通の言葉で定義して伝えること。コンビニの事業とは何か、接客とは何か、事業とバリューチェーンなど、私たちのビジネスを共通の言葉にして『見える化』すること。それが業界コンセプトです。ビジネスモデルに対する相互理解のベースになります」と、海外でビジネスを進める上で重要となるキーについて語っています。法制度や国民性、システムや文化から異なる海外の事情に合わせ、日本の事情を押し付けないことが重要だということでしょう。

参考資料:ファミリーマート、味の素など、アジアで成功する企業の「独自戦略」とは

国内よりはるかに複雑で困難な海外でのガバナンスには、組織体制や業務のプロセス、人材交流などが重要になります。それと同時に、お互いを尊重できる関係が必須です。これから増えていくグローバル企業にとって、失敗例と成功例から学ぶことは多いと思います。

セキュリティガバナンス

ここからは、グローバル企業のガバナンスにおいても重要になってきているセキュリティガバナンスについて解説していきます。

インターネットの普及により、国内だけでなく海外でも場所を問わず通信が行えるようになった今日、情報セキュリティの分野での対策もグローバル企業にとっては必要となっています。多くの企業が進出するアジア地域は、まだこれからインターネット人口が拡大を見せていくと言われており、セキュリティ構築が後手になればマルウェアが流れに乗りやすいと思われます。実際に、アジア地域の情報機器は日本よりマルウェアの感染率・遭遇率が高いという調査結果もあります。(マイクロソフト セキュリティ インテリジェンスレポート 第21版2016年1~6月)アジア地域では、次のような要因が情報セキュリティの危険性を高める可能性があるということです。

  1. IT、インターネットの急速な拡大とマルウェア(不正プログラム等)の流通増加。
  2. USBなど外付けメディアの高い利用頻度と感染率の上昇。
  3. 一般市民における海賊ソフトの使用がマルウェアの温床に。
  4. インフラ未整備、経験や知識不足からの情報セキュリティ意識の低さ。
  5. 雇用者となる人材の流動性(早期退職者における低いモラル)。

参考資料:グローバル時代のビジネス展開と情報セキュリティ対策

こうした現状の中、セキュリティガバナンスにおいて、重要となる対策のポイントでは次の3点が挙げられます。

  1. 管理面での施策としての「セキュリティポリシー」と技術施策の統一性をとるうえでの「標準セキュリティ」の2軸での運用。
  2. クラウドも含めたシステム全体の包括/一元的な管理。日々起こる現象や周辺の事情に合わせたセキュリティやシステムのアップデート。
  3. 社員の教育は、拠点や工場などを置く国の国民性や社会環境、セキュリティ意識を考慮したもの。

参考資料:グローバル時代のビジネス展開と情報セキュリティ対策
世界中に広がるランサムウェア「ワナクライ」などが騒がれる昨今、その土地環境にあったセキュリティガバナンスが求められているようです。ここでも、日本流の考えの押し付けになるのではなく、侵害された場合も被害を最小限に止めるために協力することが必要です。